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反復経頭蓋磁気刺激-repetitive Trans-cranial Magnetic Stimulation(rTMS)-

 まずTranscranial Magnetic Stimulation(TMS)とは,経皮的に頭上から8の字のコイルを当てることでファラデーの法則から脳局所にニューロンの興奮を惹起させる非侵襲的な技術と言われている。

 従来は脳の局在性を調べる検査技術だったが、この刺激を反復させることにより脳活動性を制御できることが示唆されるようになり、脳卒中における"repetitive” Trans-cranial Magnetic Stimulation(rTMS)の効果が様々な面で研究されている。

 脳卒中後の脳の活動度に関しておさらいすると、脳卒中後の脳は左右の大脳を互いに抑制する「半球間抑制」のバランスが崩れた状態にあり、患側は低活動、健側は過活動になると考えられている。

 慢性期脳卒中患者に対して過活動と考えられる健側運動野を1Hzの低頻度刺激で抑制し、集中的リハビリ訓練と共に併用することで上肢機能障害、運動障害に有効とされるデータが集まりつつある(脳卒中ガイドライン2015)とされるが、推奨グレードはC1(行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない)。

 その他に脳卒中の範囲では中枢性疼痛(長続きしない?)、半側空間無視(刺激部位・方法が統一されていない)は同様にグレードC1の推奨がされている。嚥下障害の改善の報告もあるが、メタ分析的には有意な効果はないとの報告。失語は効くとも効かないとも。

 動物実験では,急性期の脳梗塞に対して5Hz以上の高頻度刺激で脳活動を促通することで梗塞巣の進展を抑制する神経保護作用も認められているとの話もある。

 臨床面では保険適用上は「既存の薬物療法に反応しない DSM-5 の大うつ病性障害の治療装置(高度管理医療機器、特定保守管理医療機器)」として、2017 年 9 月に薬事承認されてはいるけどリハビリの範囲では保険適用はされていない様。電気けいれん療法よりは効果が薄いみたい。

 副作用としては30%前後の頭皮痛・刺激痛、顔面の不快感、10%前後の頸部痛・肩こり、頭痛があるようだが、けいれん発作の様な重篤な副作用は0.1%未満と報告されている。

<参考>

東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座

平成29年度 新医療機器使用要件等基準策定事業(反復経頭蓋磁気刺激装置)事業報告書 日本精神神経学会